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新宿での年内の用事は全て済んだ。

「…」

トンネルの奥から、声が聞こえてきたような気がする。

「誰かいるのかー!」

「…」

気配がする。トンネルの奥へと進む。

「誰かいるのかー!」

「…!」

間違いない。誰かいる。さらに進む。

「おーい! 誰だー!」

「…す!」

「…です!」

「…ちです!」

「…っちです!」

「…づっちです!」

 

「ねづっちです!」

ウィスパーボイス

「本当に迷惑だよなぁ。バカじゃねえか、こいつ。」

老人になってもガラの悪さが抜けない男は、

電車内で隣に立った、

肩に大きなカバンを背負い、傘を持ち、つり革を持ち、

スマホをいじり、イヤホンをしている、

クイズ研究会に入っていそうな若い男に向かって、

それはそれはとても小さなしゃがれ声で、ささやいた。

イヤホンをしていたし、それはそれはとても小さなしゃがれ声だったので、

若い男には聞こえるはずもなかったが、

気配を感じたのか、

若い男が老人のほうを向くと、

老人は、顔をそらした。